【2026年法改正】新しい成年後見制度の概要

超高齢社会が急速に進展する日本において、認知症や精神障害、知的障害などにより判断能力が十分でない方の財産や生活、権利を守るための仕組みである「成年後見制度」は、誰もが直面し得る非常に身近で重要な制度となっています。

しかし、これまでの成年後見制度には、「一度利用を開始すると、ご本人が亡くなるまで原則としてやめることができない」「本人の財産を守ることが優先されすぎて、柔軟なお金の使い方や生活のサポートが難しい」といった課題がありました。その結果、制度の利用をためらってしまうご家族も決して少なくありませんでした。

こうした状況を改善し、ご本人の「自己決定権の尊重」と「保護」のバランスを取りながら、より利用しやすい制度へと生まれ変わるため、成年後見制度の大幅な法改正が行われることとなりました。

本コラムでは、これから制度の利用を検討されている方や、将来の不安に備えたいとお考えの方に向けて、新しく生まれ変わる後見制度(法定後見制度・任意後見制度)の主要な変更点やメリットについて、詳しく、そして分かりやすく解説いたします。

1  法定後見制度の基本類型が「補助」に一本化されます

 1-1 これまでの法定後見制度

これまでの後見制度では、ご本人の判断能力の低下の程度に応じて、「後見(最も重い)」「保佐(中程度)」「補助(軽度)」という3つの類型に分かれていました。しかし新制度では、これらを抜本的に再編し、法定後見の基本となる類型を「補助」へと一本化する仕組みが導入されます。

1-2 ご本人の状況に合わせた「オーダーメイドの支援」

新しい「補助」制度は、精神上の理由により事理弁識能力(物事を正しく判断する能力)が不十分な方について、本人やご家族などの請求権者からの請求があり、かつ「保護の必要性」が認められる場合に開始されます。

最大のメリットは、一人ひとりの状況に合わせて支援内容をカスタマイズできる点です。具体的には、補助開始の審判とセットで、以下のいずれか、またはそれらを組み合わせた審判が行われます。

・特定の法律行為(例:不動産の売却・遺産分割協議)について補助人に「代理権」を

 付与する審判

・特定の法律行為について補助人の「同意」を要件とする審判

・「特定補助人」を付する審判

このように、本当に支援が必要な行為にのみスポットライトを当てて保護を行うことで、ご本人の残存能力を最大限に活かすことが可能になります。

 

2.   重度の方を支援する「特定補助人」とは?

2-1 「特定補助人」が必要とされる人

3類型が「補助」に一本化される中で、「事理を弁識する能力を欠く常況にある方」(=現行制度の「成年後見」に相当する方)を対象に、家庭裁判所の判断で選任されるのが「特定補助人」です。つまり現時点で既に重度の認知症となっているかたを守る制度といえます。

 

2-2  特定補助人の権限

特定補助人が選任されると以下の権限を持つことになります。

 

取消権:本人が行った、法律で定められた重要な行為を後から取り消すことができる権限。日用品の購入など、日常生活の行為は取り消せません。

この取消権の及ぶ範囲は裁判所によって追加されたり、逆に縮小させたりすることができます。

つまり「本人の意思尊重(自己決定権の尊重)」と「迅速な保護」の両立を図った制度となります。

 

3 「必要なときだけ利用する」柔軟な運用が可能に

従来の制度が敬遠されていた最大の理由である「利用の硬直化」も大きく見直されます。新制度では、事情の変化に応じて見直しや終了がしやすい運用へと舵が切られました。

3-1   補助の「終了(取消し)」ができる仕組み

たとえば、遺産分割協議や不動産の売却など、特定の目的のために制度を利用し、その目的が達成されて保護の必要性がなくなったと判断された場合には、補助開始の審判を取り消し、制度の利用を終了することが可能になります。

ただし、必要性の有無の判断については、あくまでも家庭裁判所が判断することになりますので、その点は注意が必要です。

3-2 補助人の交代(解任)ルールの緩和

従来は、後見人を解任できるのは横領などの明らかな不正行為があった場合などに限られており、容易ではありませんでした。

新制度では「本人の利益のために解任が特に必要なとき」という要件が追加されました。

これにより、欠格事由にまでは至らなくても、補助人とご本人・ご家族との間で信頼関係が損なわれたようなケースや、ご本人と補助人との関係が悪化した場合などにおいて、より柔軟に補助人の交代が認められるようになることが期待されています。

 

4 本人の意向の尊重と身上への配慮の明確化

 成年後見制度の目的は、単に財産を失わないように鍵をかけることではありません。

ご本人がその人らしく、幸せな生活を送れるようにサポートする「身上保護」こそが重要です。

 新制度においては、補助人が事務を行うにあたり、「ご本人の意向を尊重し、心身の状態や生活の状況に配慮しなければならない」という義務が法律上明確に定められました。 具体的には、補助人等はご本人に対して、これから行う事務に関する情報提供を行い、ご本人の意見に耳を傾け、適切な方法で意向を把握するプロセスを踏むことが求められます。

ご本人の意思決定支援が、制度の根幹に据えられたと言えます。

 

5   新しい後見制度はいつからはじまるのか?

新しい後見制度に関する改正民法は617日の参院本会議で賛成多数で可決、成立しました。成年後見制度の見直しは、2028年度中に施行される見通しとなります。

つまり、現段階では現行の制度が適用されるため注意が必要です。

そのため、現在すでに親御さんの認知症が進んでいる場合や、直近で実家の売却・相続手続きを控えている場合は、この法改正を待つ余裕はありません。現行制度の利用、あるいはまだ判断能力がある段階であれば「家族信託」や「任意後見制度」といった生前対策を早急に検討する必要があります。

 

おわりに

 ここまで、新しくなる成年後見制度の概要について解説いたしました。 基本類型が「補助」に一本化されることで、よりオーダーメイドな支援が可能となり、さらに制度の終了や見直しが容易になるなど、新制度はこれまでに比べて「市民にとって利用しやすい、柔軟で温かみのある制度」へと進化を遂げます。

 しかし、制度が柔軟かつ多岐にわたる選択肢を持つようになる分、「どの仕組みをどのように活用するのが自分や家族にとって一番良いのか」を見極めるための専門的なアドバイスが、これまで以上に不可欠となります。

 

山猫司法書士事務所は、町田市・玉川学園駅前に位置し、最新の法律知識に基づき、ご本人様とご家族の「こう生きたい」「こう守りたい」という想いに真摯に寄り添い、最善の解決策をご提案させていただきます。

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