相続をした不動産の調べ方
不動産の登記記録は土地や建物ごとに作成されており、特定の人が所有権の登記名義人となっている不動産を抽出して、網羅的に調べる方法が存在していませんでした。
なので、被相続人の所有する不動産を相続人が把握しきれず見逃されてしまい、相続登記がなされず放置されてしまう事態が多くありました。
そこで令和8年2月2日から「所有不動産記録証明制度」という制度が施行されることとなりました。
今回はこの制度について詳しく説明をしていきます。
1.今ままでの相続不動産の調べ方
1-1 固定資産税の納税通知書・課税明細書から調べる方法
固定資産税の納税通知書とは、毎年1月1日現在の不動産の所有者宛に、その年の5月くらいに、その不動産がある市区町村から届く書類です。
この書類の課税明細の欄に通常は課税対象の不動産の表示が記載されるので、そこから相続不動産を把握できます。
ただし、この書類には課税されない不動産については記載されません
古くから所有する山林、自宅の私道部分やゴミ置き場部分はは評価額が低く固定資産税がかからない場合が多くあります。
そのため、納税通知書にはこれらの不動産が記載されず、相続登記をするときに見逃してしまうことがあります。
1-2 名寄帳から調べる方法
所有している不動産の市区町村に請求をすることにより名寄帳という書類を取得することができます。
名寄帳は、所有者につき市区町村ごとに作られますのでその市区町村にある不動産であれば、亡くなった被相続人の方が所有をしていた不動産の全てが載ってきます。
ただし、その市区町村以外の不動産については載りません
ですので、被相続人が他の市区町村で不動産を所有していた場合については、その存在が判明せず相続登記を見逃してしまう場合があります。
1-3 不動産の権利証から調べる
他には亡くなった被相続人の方が所持していた不動産の権利証を調べてみてそこに記載されている不動産の表示から、所有していた不動産を新たに発見するということもあります。
ただし、古い不動産の権利証はそれ自体を紛失してしまっている場合も十分に考えられます。
2 所有不動産記録証明制度の制定
そこで、義務化された相続登記の申請にあたっての当事者の手続き的負担の軽減、及び登記漏れを防止するという観点から所有不動産記録証明制度が令和8年2月2日から施行されます。(不動産登記法第119条の2)
2-1 所有不動産記録証明制度の概要
所有不動産記録証明制度とは、特定の人が所有者となっている不動産を一覧的にリスト化して証明をする制度となります。
これにより相続人は相続登記が必要な不動産の把握が楽になり、登記漏れのリスクを大幅に減らすことが可能となります。
2-1 所有不動産記録証明書を請求できる人
この所有不動産記録証明制度にもとづく証明書については誰にでも請求が出来るわけではなく以下の人が請求をできることになります。
・不動産の名義人本人
・不動産の名義人の相続人
・本人・相続人の代理人
以上の人が請求をすることができます。
3 所有不動産記録証明制度の注意点
この所有不動産記録証明制度により、今後相続をした不動産の調査漏れが減っていくことが期待をされますが、この制度には注意点があります。
3-1 住所氏名変更の登記が未了の不動産
請求時点での登記名義人の氏名及び住所の情報に基づいて検索をした結果を証明するもののため、その両方が一致したものしか一覧に表示されません。
例えば、登記簿上の住所が町田市の住所で登記されている不動産があったとして、その後にその所有者が相模原市に引越しをしたとします。
この場合、相模原市の住所で請求をかけた場合、所有者の住所が町田市のままになっているこの不動産については一覧に載ってこない可能性があることになります。
また、例えば結婚後に氏名を変更していない不動産についても、住所の場合と同様に請求をかけたとしても一覧に載ってこない可能性があります。
3-2 相続登記が未了の不動産
相続の登記がずっと放置されているものについては載ってこない可能性があります。
この制度は、所有者の氏名及び住所を基に検索をする制度のため、代々相続登記が未了となっている不動産については一覧に載らない可能性があります。
なので、一覧に全ての不動産を記載されるようにするためには、相続登記と住所・氏名の変更の登記が適切に行われている必要があります。
ただし、令和6年4月1日から相続登記の義務化がスタートし、住所氏名変更の登記に関しても令和8年の4月1日からスタートをするので、この問題に関しては解消していくのではないかと思われます。
4 まとめ
所有不動産記録証明制度を活用することにより、相続登記漏れのリスクを大幅に減少させることが可能となります。
しかし、その前提となる相続登記や、住所氏名の変更の登記がされてない場合は、その不動産については相続登記を漏らしてしまう可能性があるので注意が必要です。
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