具体的相続分による遺産分割の時的限界

相続が発生し、いざ相続人間で遺産の分け方を決める話し合いを始める事になった場合、実際の話合いでは、相続人間でさまざまな事情を考慮し、各相続人が受け取る相続分を調整し決定するという事になっていく事が多いのではないかと思います。この調整後の相続分を「具体的相続分」と言います。令和5年4月1日からこの相続人間での話合い(遺産分割協議)をする際の新しいルールが出来ました。

 

具体的相続分の決め方

まず、各相続人には、法定相続分という民法で決められた各相続人が受け取る事が出来る相続分があります。この法定相続分の割合を、各相続人のさまざな事情を考慮して、相続人全員で話し合いをして、各相続人の法定相続分の割合を変更し、具体的相続分を決定する協議が、遺産分割協議となります。

では、どのようにしてこの具体的相続分を決めていくのでしょうか。

 

特別受益

民法では法定相続分の修正の要素としていくつかの規定を設けています。

その中の一つ「特別受益」(民法903条)とは、「被相続人から生前に受けていた贈与」の事をいいます。

例えば

「被相続人から生前に、家を建てる為の資金の援助を受けていた。」

「事業の資金としてまとまったお金を援助してもらった。」

等がこれにあたるかと思われます。

いわば、遺産の前渡しのようなイメージです。

ただし、個々のケースによって特別受益にあたるかを判断しますので判断は難しいところです。

特別受益と認められる場合は、その相続人の相続分を減らし各相続人の相続分を調整する事になります。

 

寄与分

寄与分(民法904条の2)とは「被相続人の財産の維持・増加に特別な貢献をした相続人を他の相続人の相続分よりも有利に扱う制度」です。

例えば

・被相続人の生前に療養・看護等で貢献をした相続人

・被相続人の生前の生活費を負担していた相続人

などが該当します。

寄与分が認められる場合、その相続人の受け取る相続分はその分だけ増加します。

被相続人の為に頑張った相続人にはその分だけ取り分を多くしましょうという考え方です。

 

問題の所在

以前までは具体的相続分の割合による遺産分割には時的制限がなく、その為被相続人の死亡後に長期間放置をしていても、具体的相続分での遺産分割を希望する相続人に不利益が生じませんでした。

その結果、遺産分割協議がまとまらず、亡くなった被相続人の名義のまま不動産が放置されてしまう。

協議がまとまらないうちに相続人が死亡してしまって、相続人の数が増えてさらに協議がむずかしくなってしまった。

早期に遺産分割協議をしない事により、生前贈与や寄与分に関する証拠を紛失してしまい具体的相続分の算定が困難になってしまった。

などの問題が発生し、これが所有者不明土地が増加する原因の一つだと考えられてきました。

 

遺産分割に関する新しいルールの改定

所有者不明土地問題の増加への対策の一つとして、令和3年の民法の改正により新しいルールが制定されました。(令和5年4月1日施行)

遺産分割がされずに長期間放置されるケースの解消を促進するため、相続の開始から10年が経過した後にする遺産分割は、原則として、具体的相続分ではなく法定相続分または遺言によって定められた指定相続分によって画一的に行うこととなりました。(改正民法904の3)

 

このルールの例外

相続開始から10年が経過した後であっても、相続人が具体的相続分により遺産分割をすることに合意した場合。

・相続開始から10年経過前に、相続人が家庭裁判所に遺産分割の請求(調停など)をした場合

・相続開始から10年の期間満了前6カ月以内に、遺産分割請求をすることができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、当該事由が消滅したときから6カ月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産分割の請求(調停など)をした場合。

以上の場合は相続開始から10年経過した後であっても具体的相続分による遺産分割をすることができます。

 

改正前の相続について

この制度が適用されるのは、改正日(令和5年4月1日)以後に生じた相続だけではありません。

それ以前に生じた相続であっても、今回の制限(相続開始から10年以内の遺産分割)が課される事になります。

ただし、次のいずれか遅い日となります。

・相続開始から10年が経過する日

・令和10年3月31日

 

今回ご紹介をさせていただきました、特別受益や寄与分についての判断は個々の事情により判断基準が違うため、その判断をご自身で行うのは難しい場合があります。

明確な基準がないため、この判断を個々で行ってしまうとその後の思わぬトラブルへと発展してしまう可能性もあります。

その場合は専門家に相談される事をお勧めします。

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